第4話「同胞」



もくじ

 

「日本はまだ存在している」という事実がある。

 

漢中との戦争に敗北した日本は解体され、

五つの独立国家が誕生した。

エド」「ホッカイ」「オワリ」「キョウト」「フクオカ」である。

この時、日本が所有していた資産の権利は

基本的にはエドへ引き継がれたが、

未だ完全解決へ至っていない問題が多く遺されている。

例えばアメリカ・ワシントンにある

エド大使館」の登録名義は現在も「日本」のままである。

つまり現在も国際法上は

「1億人の人口を持つ大国・日本」と

エドを含む5つの独立国家」という枠組みが

並行して存在しているのである。

事実として日本は国連の登録から抹消されていないし、

キョウトなどの国境は国連に登録すらされていない。

しかも、エドはこれまでに一度も

旧日本の国々を独立国としては認めていないのである。

このように国際法上の旧日本各国は、

日本の権利を引き継いだエドの一領土と見る事ができるのだ。

 

日本が軍事大国への道を突き進み、

核の保有へ踏切り世界を敵に回した時代。

エド大統領・谷塚英二は、

日本公安調査庁に所属していた。

 

 

谷塚大統領は、キョウトとオワリとの

首脳交渉会談に向かう車中で

日本の行く末に想いを馳せていた・・・

 

漢中人民共和国にとって脅威だった「日本」の

解体計画実行の情報を、当時の公安はキャッチしていた。

そして日本は軍事大国への道を突き進み、

核兵器保有に踏み切った。

しかし、すべては国際金融資本家たちの計画であり、

漢中人民共和国を筆頭とした

世界包囲網に日本は次第に追い詰められていった。

歴史は繰り返す・・・

何故、日本人は気がつかなかったのか・・・

いや、私を含め多くの日本人は気がついていた・・・

しかし、下り坂を転がり始めた岩は、

容易に止めることはできなかった。

そして、我々は自分たちの力を

過信しすぎてしまった・・・

いや、自分たちの力を

過信するように仕向けられたのだ・・・

歴史は繰り返す・・・

結果、最大の激戦地となった近畿地方は荒野と化し、

20XX年8月15日、日本は敗戦した。

 

 

近畿地方を中心として

独立宣言をしたキョウトは

莫大な復興支援を必要とした。

当時の村田キョウト大統領から支援を求められた谷塚

即刻、支援を決定した。

エドの大統領として。

日本の同胞として。

愛国者として。

 

to be continued...

 

 

第3話「復興」

 

第5話「江華」