第6話「決裂」

 

もくじ

 

エド・キョウト・オワリの三国首脳会談で

エド谷塚大統領がキョウトに出した要求は3つ。

①復興完了までの期限付きで譲渡していた石川県の返還

エド系住民への迫害行為の即刻中止

③キョウト国内で暴虐行為を働いている「江華連隊」なる武装集団の即刻国外追放

 

 

これに対しキョウトの森山大統領の答えは「すべて受け入れることはできない」であった。

【①石川県の返還要求】に対しては、

「キョウト国民の税金で発展させてきた石川県を、国民の同意なしで簡単に返すわけにはいかない」と返答。

「ならば国民に問え、ただし石川県に7割いるエド系住民にも公平に」と谷塚大統領が詰め寄ったが、

森山大統領は「ここまで石川県を発展させてきたのは我が国です」と回答をした。

 

 

そして、【②エド系住民への迫害行為の即刻中止】に対しては、

エド系住民への迫害行為など存在しません、それは我々の治安維持活動の事を仰ってしるのでしょうか」と回答。

さらに「閣下は我が国に治安維持活動を中止しろと仰りたいのか?」と発言。

 

 

【③武装集団「江華連隊」の即刻国外追放】に対しては

「我が国キョウトへの内政干渉はやめて頂きたい。

江華連隊は、キョウト軍の正規部隊です。

他国の部隊を排除しようとするなど、戦争行為と受け止められますよ。

そんな要求を呑むことは事はできません。

仮に国外追放をして、何処の国が受け入れてくれるのですか?」と森山大統領の発言。

「漢中以外どこがある」と谷塚大統領は即答した。

 

 

ここでやっとオワリの木村大統領が発言をする。

「まぁ内政干渉はまずいでしょう。

石川県はキョウトがここまで発展させてきたんだから

そりゃ森山大統領だって、『はいそうですか』とはいかんわな。

例えばエドがキョウトに譲渡金を払うとかすればいいかもしれないけど・・

で、エド系住民の迫害ってのは・・まぁものの見方なんでしょうけど・・

他国の治安維持活動を制限する権利はいくらエドにも無いんじゃないですか。

他国の軍人つかまえて、国外退去させろはねえ・・

退去させる根拠はなに?根拠は?」

 

 

谷塚大統領が静かに口を開く。

「世界を牛耳ろうとしているグローバル資本家たちの計画は

完成を迎えようとしている。

ニューワールドオーダー・新世界秩序だ。

国境を無くし、世界統一政府を樹立するのが奴らの目的だ。

地球の行く末は自分たちが決めるという思想の持ち主の狂人たちだ。

自分たちのことを「神」だと本気で信じている連中だ。

そして奴らが目指すのは超監視社会、人間牧場だ。

マイクロチップ

キャッシュレス、デジタル通貨。

個々人のデジタル端末。

全人類のナンバリング

そうしたビックデータはグローバル企業を通じて

奴らにすべて吸い上げられていく。

今や、一人の人間の皮膚の下まで筒抜けだ。

これらの計画はほぼ完成に近づいているのが分かるだろう。

このデジタル社会に危機感を覚えた人間がどれだけこの国にいた?

ほとんどいやしない。

奴らは巧妙に狡猾に、真綿で締め付けるように計画を遂行したのだ。

我々はとうの昔に戦争に負けていたのだ。

実弾が飛び交う戦争ではない、情報戦争とパンデミック戦争だ。

我々は、気がつかないうちに参戦させられ

気がつかないうちに敗戦していたのだ。

 

しかし、奴らにも日本人の精神までは破壊する事ができなかった。

日本人の大和魂までは破壊する事はできなかったのだ。

そこで奴らは、ニューワールドオーダーの足掛かりとなる

共産主義国家・漢中人民共和国を誘導し、

日本に戦争を仕掛けてきたのである。

結果、日本は国土を蹂躙され物理戦争でも敗戦した。

しかし我々日本人は魂だけは失うわけにはいかなかった。

だから断腸の想いで日本列島の中に国境を敷き、

私の同志である前キョウト村田大統領を初め、

それぞれが独立国として歩く道を選んだのだ。

日本人が生き延びるために、極東の神の国・日本のために。

そして今、奴らの謀略によって誇り高き日本の古都キョウトが

漢中に蝕まれている。

以上が根拠だ。

 

キョウト国民の税金で石川県を発展させた?

県内に800もの兵器工場を作っておいて何を言うか・・!」

 

木村大統領はヤレヤレといった具合に肩をすくめる。

 

谷塚大統領は続ける。

「我々エド国には石川県にいるすべての日本人を守る義務がある」

 

 

森山大統領は肩を震わせながら瞬きひとつしなかった。

 

 

 

to be continued...

 

 

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