第3話「復興」



もくじ

 

先の漢中人民共和国との戦争では

現在のキョウトの地域が主戦場となった。

甚大な被害を受けた大阪、兵庫、岡山などは

変わり果て荒廃した。

 

 

NPT(核拡散防止条約)へ加盟をして核を放棄したキョウトは、

エド谷塚英二大統領に復興支援を求める。

そこで谷塚大統領は、

キョウトへ石川県の「自治権」を

復興完了までの期間限定で渡すことを決定する。

これがオワリ愛知県犬山市で行われた

「犬山合意」である。

晴れて石川県は期間限定ではあるが

キョウトの領土となった。

 

 

そして漢中人民共和国も

キョウトへの復興支援へ乗り出す。

漢中の資本によって

大阪や神戸の街はみるみる復興していった。

国内には高層ビルが乱立し、

高速道路が蜘蛛の糸(ウェブ)のように張り巡らされた。

 

そして、滋賀県の琵琶湖の周りには

急ピッチでプラント工場が建設された。

この工場は漢中政府幹部の

個人資本が入った「控制有限公司」所有の工場であった。

表向きは合法企業であったが、

その内実は「麻薬製造」「大量破壊兵器製造」

「生物化学兵器製造」が主な生業であった。

そして、それらの技術研究を行っているのが、

同じく滋賀県にある「新長浜研究所」である。

研究所には、

日本分断によりキョウト国民となった関東人が多く勤めていて、

旧日本国の優秀な研究員が所属していた。

旧日本国の優秀な技術は、

キョウト国内で「麻薬」「非人道兵器」の

製造開発に利用されていたのである。

 

これらプラント工場の、

表向きの所有はキョウト企業の「貝沼製作所」となっていた。

そこには「マネーロンダリング」という

漢中政府幹部の最大の目的があり、

闇の経済活動を海外のキョウトという国で

すべて簡潔できる仕組みが完成されていた。

 



金融及び暗号資産システムの

コンピュータ施設をキョウトに置き、

マネーロンダリングや株価操作などの

金融犯罪を行っていたのである。

キョウトは国際犯罪の拠点となっていた。

こうして漢中政府幹部は私腹を肥やしていった。

 

漢中政府は、現キョウト大統領・森山拓海にも、

しっかりと甘い汁を与えた。

絶対的な地位と権力の保障、莫大な富の供与。

こうして森山大統領は、

漢中政府の傀儡政治家となっていったのである。

キョウト国民はそんな事は知る由もなく、

一向に改善されない生活苦にあえいでいた。

20%を下回る事がない失業率。

著しい物価上昇、上がる事のない賃金。

キョウト国内では富の二極化が進んでいた。

 

こうして、キョウトは

表向き国土復興を果たしたのだった。

 

 

to be continued...

 

 

第2話「覚書」

 

第4話「同胞」